原点…。
せぼねとは・・・。
せぼねには、どのような機構が働いているかというと、せぼねに側彎(横方向の曲がり)をつくることによって、肩と頭がつねに一定の空間的位置を保てるようにしているのです。
骨盤が傾くとそのすぐ上の腰の部分(腰椎部)も同じ方向に傾くが、さらにその上のせぼねは立ち直ろうとして反対方向へ傾く、すなわち、骨盤が傾くと、腰椎部には傾いた方向に凸の側彎が出現し、その上の背中の部分(胸椎部)には腰椎部の側彎を代償するように反対方向の側彎が出来ます。
このようなせぼねの側彎が一歩ごとにつくりだされるので、頭や肩の位置を一定に保ちながら歩くことが可能となっているのです。
そして彎曲は衝撃を吸収します。
人間のせぼねに三つの彎曲があることは、まっすぐなせぼねの場合より、衝撃吸収能力の点で10倍優れているといわれます。
たとえば、高い所から飛降りたとします。着地の瞬間には頭からの重力が骨盤に衝撃として伝わり、このときせぼねの三つの彎曲のおかげで、その衝撃は十分の一に緩衝されることになるのです。
また逆に、地面から頭に伝わる衝撃も十分の一に緩衝されることになります。
このような衝撃は、飛降りるときばかりではない。普通に歩いているときにも程度は小さいが頭はつねに上下しているため、同じような衝撃が繰り返し発生しています。
それをつねに十分の一に緩衝しているのですから、人間のせぼねはじつに目的にかなった、すばらしい彎曲構造をもっているといえるでしょう。
ようするに、せぼねの彎曲は人間が立つことに重要な役目をしているのです。
いや、せぼねの彎曲がなかったら人間はスムーズな2足歩行はできていないと考えられます。
私達人類が他の動物と違う点もこのせぼねの彎曲にあります。
せぼねはからだの大黒柱に例えられることがあるが、大黒柱のように真っ直ぐではありません。
正面から見ると湾曲はなく真っ直ぐですが、横から見ると大きく三つの湾曲を持っているので曲がった大黒柱というわけです。
たしかにせぼねはからだの中心にあってからだを支えているという点では大黒柱ですが、いろいろな姿勢や動作で非常によく動きます。
その点では大黒柱のイメージとはほど遠い、からだを支える大黒柱としてのせぼねの形態は、両足均等に体重をかけてまっすぐに立っているときのせぼねの標準的な形態であって、姿勢が変わればせぼねの湾曲も変わるのです。
立っているとき、座っているとき、寝ているとき、それぞれのせぼねの湾曲は異なっています。からだのいろいろな動きに対応してせぼねはつねに動いており、湾曲もつねに変化しているのです。よってせぼねは動く大黒柱であると言えます。
せぼねと姿勢の関係
私達は日常においてさほど姿勢について気に止めていません。
なぜならば、その姿勢で何ら不具合を生じていないからです。
しかし、スポーツになると気にします。それは、ビジュアル的な問題(格好が良くない)があるからではないでしょうか。
たしかに、名手は格好が良いのは誰もが認めることですが。しかし、結果よりかたちを重んじるのはどうでしょうか。
かたちを求めることによって本来の力が出せない、精神的な“あがり”もこのことにつながります。
構えから入るのではなく、動きから入ることが重要だと考えます。
本題、姿勢とせぼねの関係を考えてみましょう。
せぼねはゆれる大黒柱です。
そして、そのゆれはせぼねの生理的彎曲によって行われます。
しかし、“姿勢とは”で取り上げた、悪い姿勢の場合どうなのでしょうか。
おそらく、ゆれは最小限に止められていると思います。
それは、ゆれに伴う頭のゆれをきらうこと、そして、関節の安定を求めること等により、運動そのものを少なくすることで対処しようとするのではないでしょうか。
ようするに、歩く場合でも大きな歩幅で歩くのではなく、小さくすり足のように歩き、手も大きく振れていない、ようするにせぼねの生理的なゆれは正しい姿勢によって起こるのです。
その正しい姿勢は、下半身の安定にあると考えます。
下半身が安定すれば、骨盤が安定し、その安定した骨盤の上でせぼねは揺れるのです。人のからだは、細部にわたって連動しています。
ようするに、人の運動には一定の法則が成り立っていると思います。
医学的に姿勢のチェックをモアレ写真で行ったとき、骨盤の傾斜、骨盤の傾斜の原因となる股関節の頸体角を分析します。身体のゆがみの矯正と予防のためには、姿勢のかなめである骨盤を中心に分析しなければなりません。
骨盤は、上体の受け皿の役目をするとともに、首から腰にいたる筋バランスを一手に調整しているところで、股関節によって支持されています。股関節を専門に研究している元東京慈恵医科大学の赤松功也先生のよると、股関節はいまだに四足動物の形を残しているため、四つんばいになると、よく合わさってはじめて安定するということです。
したがって、人が二本足で立った位置では、あまりうまくかみ合っていないのだそうです。
このような無理な状態のまま、重い負荷をかけられて立たされるからこそ、股関節には各種の病気がおこってきますし、股関節を正しく調整すれば病気が治ることにもなるわけです。
骨盤を支えている股関節は、下肢の運動の主役でもあります。わずかな姿勢の変化や動きの変化でも、筋肉の働き方や骨格の配置が変わって来ます。
このようなことから、骨格のゆがみの分析には、骨盤を支えている股関節の頸体角が、ほぼ正常であるか、それとも正常より外反しているか、あるいは内反しているかを調べることが重要となります。
ここでの医学的な姿勢の傾きとは、左右の傾きをいいます。よって、左右の頸体角に差が出るほど、一般には大きくなります。
骨盤の傾斜がおきると、ゆがんだ骨盤の代償性のゆがみが脊柱を中心にあらわれて、姿勢が崩れていきます。
このような症例には、脊柱側湾症などがあります。
このような医学的には、問題(痛みがでる、生活に支障がでるなど)がでた場合に、傷病として扱うのが通例です。
しかし、一般の人でも、大なり小なりこのようなことはあります。
病気としてではなく、不自然な姿勢(二本足)の性として、人はこのことを受け入れねばならないのです。いろいろな姿勢は、どのようなことで起きるのかは、複雑で一言では言い表せませんが、私は、静的な状態で、このような姿勢のゆがみが生じ、動的な状態では、支障のない程度に補正されているのではと考えます。
なぜならば、もし姿勢のゆがみが運動にも影響を与えてたとしたら、皆さんの身体のどこかに症状が出てもおかしくありません。
多少は出ますが、多くの場合筋肉が補正しています。
しかし、この筋肉が使えて、補正の効く間は良いのですが、筋肉の衰え(中年)、筋肉不足(子供)、過度の運動(オーバーワーク)、などで筋肉が使えなくなると、身体の故障が起きてきます。
そして、静止して行う運動(ゴルフなど)には、運動であるのに関わらず影響します。(股関節の運動に制限があるので、スムーズな回転運動ができにくいなど)このような状態を補正できるのは、股関節の頸体角をコントロールできる、補正されたインソールが最も簡単な方法であると思います。
そして、そのインソールの補正値は個々の人の足裏にあります。特別に作るのではなく、どう引き出してやるかです。だから自然に違和感なくスムーズな運動ができます。