歩行の出発点
私たちは何も考えずに歩き、立ち止まり、そして再び歩き出すことを行っています。
しかしこの歩き出す1歩は「歩行の出発点」ではなく、それ以前に行っている何気ない体重移動が「歩行の出発点」なのです。
この「歩行の出発点」が正常に出来ているのかが問題なのです。
まずは「カパンジー機能解剖学Ⅱ下肢」より抜粋してこの「歩行の出発点」を説明します。
人が立って静止しているときでは、体重は左右の2つの足に均等に分配されています。
これでは片方の足を進めるために片方の足を持ち上げることは不可能です。
歩行の出発点はまず荷重分配を調整することから始まります。
それは片方の足を持ち上げるために体重をもう片方の足へ移動させる必要があります。
一般的には右利きの人は右足から踏み出します。
その右足を踏み出すためには左足に体重を移動させる必要があるのです。
その体重移動のメカニズムは下図の番号順となります。
まず左足に体重を移動させるための第1段階は
①左の内転筋の収縮によって②骨盤は左側へ移動します。同時に③小中殿筋の収縮によって④骨盤の右半分が持ち上がり、したがって⑤重心は左へ移動します。
この一連の動作によって右足は体重の負荷から解放されるのです。
次は右足が前に出る第2段階です。
足が前に出るために⑥ハムストリングスの収縮が⑦骨盤を前方へ推進させ、前方の不均衡が生じ、これが右足の前方への1歩の始まりです。
この運動は左足関節の屈曲を制限する⑧左下腿三頭筋の収縮によって制限されます。
同時に右股関節の筋肉群は⑨右膝を前方へ推進し、⑩右足関節の屈筋群はすでに重心移動で挙上されているe右足のつま先を持ち上げスムーズに1歩が出るのです。
eこの足のつま先を持ち上げるのは極めて重要で、この動作が地面との接触を回避して転ぶのを防ぐのです。
これが「歩行の出発点」のメカニズムです。
このような動作を何も考えずに正確に行えるには乳児から幼児期を経て小学年の高学年までの長い期間を要します。
乳児から幼児期にかけてのハイハイ運動は股関節廻りの筋肉の鍛錬期間です。
ハイハイ運動期間が短かった子供は内転筋の発達が悪くなり外反膝などの障害が起きやすくなります。
早く立たせることをせずに自立するまで見守ることが親の役目なのでしょう。
歩行中は「歩行の出発点第1段階」は省かれます。
それは足の運び(ステップ)が適正であれば「歩行の出発点第2段階」の動作が連動して行われて歩行が完成します。
歩行の完成に必要不可欠なのは「股関節の機能と転位」です。
この「股関節の機能と転位」を改善するのが「3Fトレーニング」です。
次回は「股関節と膝関節の関係」について書きます。